名物を生んだ、熟練の手仕事。
長岡市栃尾旭町。雁木通りを歩くと「名物あぶらげ」の看板が目に飛び込んできます。青いのれんが目印の佐野豆腐店を営むのは、佐野佐敏さん(64歳)とそのご家族。お店の売りは、もちろん、あぶらげ。 ふっくらとした皮のやわらかさと、さっくりとした油ぽっくない仕上がり。そこには店主、佐敏さんのこだわりがありました。昔ながらの製法、昔ながらの器具を使い、ほとんどが手作業。特に力を入れているのは、にがりの打ち方です。にがりを加えて撹拌することで、豆乳は次第に固まり、豆腐に近づいていきます。その工程を機械化せず、桶にそって手を櫂のようにゆっくりとまわし入れ、微妙なさじ加減で力を加えていく。「どの角度で櫂を入れるか、どの時点で手を止めるか。何度も何度もやってみて、やっと自分なりにコツをつかみました」。あぶらげをつくり続けて40年。佐敏さんが自ら編み出した熟練の技です。